特定非営利活動法人ともに歩む認知症の会・茨城【ご寄稿】
今回は、認知症カフェの開催など認知症の方や家族を支える活動を行っている、特定非営利活動法人ともに歩む認知症の会・茨城様によるご寄稿です。 いばらきみまもりプロジェクトに参加しており、理事長の澁谷史子様やメンバーの方々は取材も受けられています
【いばもりネットワーク団体活動紹介】「NPOともに歩む認知症の会・茨城」 – トピックス – いばらきみまもりプロジェクト (mimamoriai-ibaraki.com)
目次
NPO法人ともに歩む認知症の会・茨城
主に認知症カフェを運営しているNPO法人です。
認知症に関する相談や講演会・学習会の開催を行っております。
ホーム | 特定非営利活動法人ともに歩む認知症の会・茨城 (tomoniayumud2017.wixsite.com)
NPO法人ともに歩む認知症の会・茨城 理念
①支えられる側と支える側に分け隔てるのではなく、
認知症とともによりよく生きていくことが出来る社会を目指します。
②認知症の人及び家族等の尊厳を守ります。
③住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けられることを支援します。
主な活動内容
①オレンジカフェ(認知症本人の会):事前申し込み必要。
仲間と出会い、認知症について社会に発信する場所。
②オレンジサロン(認知症介護者の会):申し込み不要。 当日参加可。
認知症家族を中心とした交流の場。 オンライン併用。
場所:水戸市福祉ボランティア会館ミオス
日時:第3日曜日10時~12時(原則) *会場の都合により変更あり。
③となりの縁側(茨城県看護協会受託事業):申し込み不要。 当日参加可。
地域向け認知症カフェ。 オンライン併用。
場所:茨城県衛生会館1F
日時:第2土曜日14:00~15:30
認知症カフェオレンジサロンは認知症ご家族の場として、毎月第3日曜に交流会を行っています。 平成28年頃から開催しています。 コロナの影響のあった3年前からオンラインも併用しています。 大体10〜15人くらいの方が参加されます。
*どんなお話や交流をされるのですか?
一人一人近況をお話しいただいて、それに対して参加者の方がコメントしたり、経験をお話ししたりしています。 それと、年に1回くらいは、学習会を企画しています。 季節に関連して、たとえばこの間はお盆の季節だと、お墓や仏具、看取りといったテーマで。 どんなテーマで行うかも、オレンジサロンの中でみなさんにもお声がけして決めますね。
*オレンジサロン以外にもやられている活動はありますか?
当初認知症カフェは2ヶ所で開催していました。オレンジサロンはご家族の場ですが、認知症当事者の方と一緒にお料理をする場もつくっています。ご本人も家族も一緒に1日過ごすんです。一緒にご飯を作って、こういった交流会やレクレーションみたいなことも行っていました。ただ、コロナ禍で一旦休止し昨年度から年3.4回開催しています。
この活動を楽しみにしてくださっている方もいて、グループホームに入所している奥様を旦那さんが連れて来て、ここで一緒にご飯を食べてホームに帰る、ということもありました。
また、地域向け認知症カフェとして茨城県看護協会の受託事業で「となりの縁側」という活動も運営していて、「オレンジサロン」と「となりの縁側」が今のメインですね。
他に、年に数回、認知症に関する講演会や学習会などを企画しています。毎年講師の先生をお呼びして講演会を開催したり、シナプソロジーという脳トレを筑波大認知力アップデイケア講師の先生と一緒に開催したりしています。
また、認知症に関わる個別相談なども行っています。市報に相談案内を掲載いただいたことがありましたが、そこから認知症ご家族の方からの相談で、認知症当事者の方に合ったグループホームの転居を行政と連携して行ったこともありました。その方はその後もオレンジサロンに来てくださっています。
*どのようなきっかけでこの活動を立ち上げ、どんな思いで続けてらっしゃいますか?
私の両親が認知症になり、介護のことがわからなくて悩んだ時期がありました。同年代のママ友さんにも経験者はいらっしゃらないので話題にもできませんでした。そのようななか、市報で認知症家族の交流会の情報を見つけ、やっと参加できたのですけど、そこで交流の大切さを知り、また今の活動メンバーとの出会いもありました。いろいろお話ししているうちに、自分たちでも主催したいという思いが高まってきたんです。
*どうしてご自身たちで活動を新たに立ち上げようと思ったのでしょうか。
参加し始めたのは今から15年くらい前ですが、当時は、家族が大変という思いを共有するという場はありましたが、認知症ご家族やご本人が主体的に発信する、ということは少ない時代でした。
私たちの出会いの中に、「レビー小体型認知症」当事者の平さんがいらしたことで視点が変わりました。平さんは、「幻視がこういうふうに見えるんだ」「後ろから声をかけられるとすごくびっくりするんだよ」など、本人目線で言ってくれるんです。私の父もレビー小体型だったので、ケアの仕方や考え方が変わったんです。父に対する接し方や、父はこういうふうに思えているのかもしれないとか、すとんと理解できた。認知症の方ご本人も一緒に交流することで介護者も理解が深まってケアが変わるんだなということを知って、じゃあ私たちの考える活動をつくっていこう、となったわけです。
たとえば、ご本人が怒りの感情が爆発してどうしようもなくなることがあるんですけど、ご自身もそれで悩んでいるというお話があったりすると、それをご家族や周囲も知っているかどうかによりかなり心の持ちようが違うと思います。
*それで活動を2015年に立ち上げて、2017年にNPO法人化されたんですね。認知症ご本人の方が発信することがかなり画期的だったと感じられます。
私自身は両親の介護が大変で、仕事は続けられず、介護離職を経験しています。でも、ボランティア活動ならある程度采配できるので、介護と両立できるのではないかと思ったんです。調理師と栄養士の資格を持っていたので、食に興味がありパルシステムさんの食育活動に参加しました。そこで組合員活動を知り、今の仲間に組合員になってもらい組合員活動室を認知症カフェの場として使わせていただいたのがスタートです。
*活動を始めて、ご自身やメンバー、皆さんにどんな変化があったなと思いますか。
自分の気持ちをためないで発して、聞いてもらえて、理解してもらえることで、気持ちがすっきりするということはあったりしますね。
また、オレンジサロンに参加するご家族の方々が、1回、2回、来るごとに顔の表情が明るくなってくるんです。例えば専門医の方に認知症のご家族をちゃんと診てもらう大切さを知っている参加者が、その大切さやそれで私たちは変化があった、とお話ししたんです。それで他の参加者の方も専門医の方のところに行ったら、認知症の方の症状が変わってきて、ご家族の表情もみるみる変わっていったことがありました。
そんなふうに、諦め思考になっているところに新しい知識が入ってきたり、実際にやってみたりして悩みながらも少しずつ前向きになっている皆さんを見て、お互い変わってくるみたいなことがあります。
認知症の本では「できなくなる、わからなくなる」ことが多く語られていて、それだけだと怖いと感じています。進行にも段階があるということをこういう場で学ぶことができれば、その時期を、その時間をできるだけ楽しく笑顔で過ごしていこうよ、最期は最後として誰も同じにやってくるのは仕方のないことなんだから、というふうに人生としての捉え方が変わるといいんじゃないかなと思うんです。また、家族が亡くなり介護が終わっても継続して参加して下さる方もいらっしゃいます。自分の介護の経験を話すことがグリーフケアにもなっているのかなと。
(当法人理事:レビー小体型認知症当事者)そういうしなやかな考え方というのはなかなか本だけでは気づけないですよね。今はもうないかもしれないけど、昔は認知症になると5年でもうわからなくなってしまう・・というのが通説みたいなところがありましたし。
(澁谷)そうですよね。 あとはおそらくここ10年20年は寿命が伸びていますので、おそらく認知症になるくらいまで人々が生きられるようになったというところもあるなと思います。それで認知症や脳の分野の研究も進んできて、社会的にも捉え方は変わってきている気がします。
*そういう点で社会や通説も変わってきているんですね。その中でみなさんの活動があることで相乗効果が生まれているように感じます。
(当法人理事:レビー小体型認知症当事者)近年は軽度認知障害、認知症の前段階みたいなこともメディアでもだいぶ言われてきているので、気にされる方がここ数年多くなってきたとも思います。
今までは認知症を知られてはいけない、という感じだったのが、いいんだよ、普通の病気なんだよということがまだまだ少しですが、発信され始めてきたかなと。
私の父がレビー(小体型認知症)を発症した頃は、ドクターでもレビーを知らない方がいましたが、ここ10年くらいで認知度は上がりましたね。メディアで認知症が取り上げられるようになり、ドクターも無知ではいられなくなっています。あと、ネットでも調べられるようにもなりました。「もしかしたら私も認知症かも」と自らドクターに相談できるようになったのも大きい変化と感じます。
忘れるというのは怖いことではあるけど、考え方の角度をちょっと変えるだけで一変するんです。性格や考え方を変えなきゃということではなく。そこを認知症当事者やご家族だけでなく、社会も理解することで、さらに変化していくんじゃないかと思います。
(当法人理事:レビー小体型認知症当事者)
昔は家族が多かったから、ご家族で認知症の方がいても、皆で手伝ってあげればなんとかなってたんですけど、今はなかなかそうもいきません。でも、今と昔で違うところは、今は身近に便利なアイテムがいっぱいあるんです。
私は時系列分からないのでタイマーをよく使いますが、薬の時間などはタイマーに入れておく。そんな感じで、今の時代だからこそできることがあって、だから何も暗い気持ちになることもないし、悩む必要もないと思うんです。失敗してたことがそうやって1つ成功する。その時の喜びは、若い時には味わったことのない経験なんですよ。失ったものをもう1回できるということは、これは認知症になってみないと分からないですよ。
当たり前だった世界が当たり前じゃなくなった時に落ち込むんじゃなくて、もう一度立ち上がる力、それが1番大事だと私は思っているので、だからあまり深く考えていない(笑)性格がそうなのかな。
*できなくなったことも、それに代わるアイテムを見つけて、チャレンジし続けるということは素晴らしい考え方ですね。それができる時代になったというのも大きいんですね。
(当法人理事:レビー小体型認知症当事者)靴の紐が結べなくなったら紐なしの靴がある、ボタンが締められないならボタンなしでストンと着やすい服が今はいろいろあります。準備に手間取るなら手帳をつけるようにしておくと習慣化しますが、それもやがて書けなくなったとしても、スマホのメモ帳や、音声入力もできる。そうやって何が代用できるかな、と考えること自体が脳トレ。だから、ボーっと生きていそうでボーっと生きていないんですよ。
最後に
認知症と診断されると何も出来なくなると思っていませんか?
それは間違いです。
当会は認知症本人も一緒に活動しています。活動を通して本人が異変を感じる初期段階があることがわかりました。その時に適切な対応をする事で今の生活を維持できるのです。
本人の声を活かし、認知症を正しく理解することで家族もケアが変わります。
認知症を他人事ととらえず自分の事として考えてみませんか?
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