農業とエネルギーの共生 ソーラーシェアリングが拓く未来

こんにちは!JAVOメディアライターの近です。私の友人の家が農家をしていますが、農地の中に太陽光発電設備があるという話を聞き、興味が湧いたので、調べてみることにしました。
現在、農地活用と再生可能エネルギーによる発電を組み合わせて、農業に活用する政策があるということを知りました。今回は、この内容についてレポートしたいと思います。
ソーラーシェアリングとは何か
ソーラーシェアリングとは、農地の上に太陽光パネルを設置し、その下で農作物を育てる仕組みのことを指します。日本語では「営農型太陽光発電」とも呼ばれています。一般的な太陽光発電は、広い土地にパネルを敷き詰めて行うため、その土地を農地として利用することはできません。しかし、ソーラーシェアリングは「農業をしながら発電する」ことを目的としており、農業とエネルギー生産の両立を目指している点に特徴があります。
この発想は、1970年代にドイツの研究者が提唱した「光の分かち合い」という考え方に由来しています。植物は光合成に必要な光を利用しますが、必ずしも太陽光を100%活用できているわけではありません。例えば夏場には強い日差しが作物にストレスを与える場合もあります。ソーラーシェアリングでは、太陽光パネルで一部の光を電力に変えつつ、残りの光を農作物に届けることで、両方の生産を成立させているのです。
日本での導入の背景
日本でソーラーシェアリングが注目されるようになったのは、東日本大震災以降です。震災による原発事故の影響で、再生可能エネルギーの普及が急務とされました。2012年に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」が始まり、太陽光発電の設置が急速に広がりました。ところが、太陽光発電には「広い設置場所が必要」という課題があります。都市部では土地が限られており、また山林を切り開いて設置すると環境破壊につながる場合もあります。
その中で、農地を活用したソーラーシェアリングが一つの解決策として注目されました。農地をそのまま農業に利用しつつ、上部に太陽光パネルを設置してエネルギーを得られるため、土地を二重に活用できるのです。農林水産省もこの仕組みを認め、2013年からは一定条件のもとで農地に太陽光発電設備を設置できる制度を整備しました。
仕組みと技術的な工夫
ソーラーシェアリングでは、太陽光パネルを高い位置に設置し、光を一部透過させたり、隙間を空けたりして農作物に必要な光を確保する工夫がされています。パネルの高さはおおよそ2〜3メートルに設置されることが多く、農業機械が下を通れるように設計されます。パネルの配置角度や間隔も重要で、作物ごとに必要な日射量に合わせて調整されます。
例えば、葉物野菜やきのこのように強い日差しを嫌う作物には、パネルが日よけの役割を果たすことで収量が安定する場合もあります。一方で、稲や麦など光を多く必要とする作物では、パネルの間隔を広げて十分な光を確保する必要があります。このように、農業と発電を両立させるためには、農学的な知識と発電技術の両方を組み合わせた工夫が求められるのです。
メリット
ソーラーシェアリングには多くのメリットがあります。
1. 農業経営の安定化
農作物の収入に加えて、発電による売電収入を得られるため、農家の経営基盤を強化できます。特に天候や市場価格に左右されやすい農業にとって、安定した収入源となる点は大きな魅力です。
2. エネルギーの地産地消
農地で発電した電力を地域内で利用できれば、エネルギーの自給率を高めることができます。特に農村地域では送電網が脆弱な場合もあり、地域エネルギーとして役立ちます。
3. 環境負荷の低減
太陽光発電は二酸化炭素を排出しないため、気候変動対策に貢献します。また、森林伐採や自然破壊を伴わずに導入できるのも利点です。
4. 農業の新たな可能性
パネルによる部分的な遮光が作物にとって有利に働くケースもあります。例えば夏場の高温ストレスを和らげたり、品質の向上につながることもあります。
デメリットや課題
一方で、ソーラーシェアリングには課題も存在します。
1. 初期投資の高さ
太陽光発電設備の設置には数百万円から数千万円の費用がかかります。補助金や融資制度はありますが、農家にとっては大きな負担です。
2. 農業への影響
パネルの影によって一部の作物の収量が減少する可能性があります。作物ごとに適切な設計を行わなければ、農業が成り立たなくなる恐れもあります。
3. メンテナンスの難しさ
農業と発電設備の両方を維持する必要があるため、点検や修理に手間がかかります。また、雑草管理や農作業と設備が干渉することもあり、効率的な運営には工夫が必要です。
4. 制度上の制約
農地は原則として農業に利用することが義務づけられているため、発電を主目的とした利用は認められていません。そのため、発電と農業の両立を証明する必要があり、規制や手続きが煩雑になっています。
実際の事例
国内では千葉県や長野県などを中心に、多様な事例が報告されています。例えば千葉県のある農家では、ブルーベリー畑の上にソーラーシェアリング設備を設置し、パネルの下で果実を育てています。ブルーベリーは直射日光を好まないため、パネルの影がかえって生育環境を整える効果を生みました。また、兵庫県のある米農家では稲作と太陽光発電を同時に行い、売電収入で農業経営を補っています。
さらに、自治体や企業が連携して地域全体でソーラーシェアリングを進める動きも見られます。再生可能エネルギーを地域のインフラとして整え、農業振興とエネルギー自給を両立させる取り組みは、持続可能な地域社会を築く一つのモデルとして期待されています。
今後の展望
ソーラーシェアリングは、農業とエネルギーの両方に関わる重要な取り組みです。今後は以下の点が課題と展望として考えられます。
・制度の柔軟化
農業と発電を両立させる仕組みを広げるためには、規制を緩和し、農家が導入しやすい環境を整える必要があります。
・技術の進歩
透光性パネルや可動式パネルなど、新しい技術の導入によって、より農作物に適した発電設備が開発されつつあります。これにより、作物の収量と発電効率を高めることが可能です。
・地域社会との連携
農家単独ではなく、地域全体で導入を進めることで、エネルギーの地産地消や地域経済の活性化につながります。
・環境教育や普及啓発
ソーラーシェアリングはまだ一般に広く知られていないため、学校教育やメディアを通じて理解を深める取り組みが必要です。
まとめ
ソーラーシェアリングは、農業と再生可能エネルギーを融合させた新しい取り組みであり、日本の農業の未来を切り開く可能性を持っています。農家にとっては収入の安定化につながり、社会にとってはエネルギーの地産地消や環境負荷の低減に役立ちます。一方で、初期投資の高さや制度上の制約といった課題も残されています。しかし、これらを解決する技術革新や政策の整備が進めば、ソーラーシェアリングはより普及し、持続可能な社会づくりに大きく貢献するでしょう。
私が友人の話をきっかけに調べたこの仕組みは、単なる農地活用の方法にとどまらず、地域の未来や地球環境を考える上で非常に意義深いものだと感じました。今後も動向を注視しながら、自分自身も再生可能エネルギーや農業の可能性について学び続けたいと思います。
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参考文献
– 農林水産省「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の推進について」https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/solar.html
– 環境省「再生可能エネルギーと地域共生」https://www.env.go.jp/
– 日本ソーラーシェアリング協会 公式サイト https://solar-sharing-japan.org/
– 千葉大学 環境学研究科「ソーラーシェアリング研究の取り組み」
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