読書の喜びを、世界中のすべての子どもたちへ
こんにちは!JAVOメディアライターの岡前です。
気付けば暑い夏も終わり、すっかり秋の空気が漂う毎日になりましたね。
秋と言えば読書の季節。気持ちの良い天気の中でページをめくる時間は、心が弾むひとときです。
しかし、世界には家庭や学校で本に触れる機会が限られている子どもたちもたくさんいます。今回は、そんな子どもたちの現状と、子どもたちに本を届ける活動例を紹介します。
1.世界の子どもたちと本の現状
前述したように、世界には本を読む機会が与えられない子どもたちが多くいます。特に発展途上国では、学校に図書室がなかったり、家庭に本がほとんどないことも珍しくありません。
たとえばアフリカのある国では、小学校に図書室がある学校はわずか数%にすぎず、多くの子どもたちは紙の教科書だけで勉強しています。また、アジアの一部地域では、母語の絵本や物語本がほとんど手に入らず、子どもたちは読む楽しみを経験する機会がほとんどありません。
UNESCOの報告によると、世界の子どもの約半数が母語での本に十分に触れられない環境にあるとされ、都市部と地方の間や、裕福層と貧困層の間で大きな格差が存在します。
この現実は、単に「本がない」という問題だけでなく、学びや想像力を育む機会の不足、文化や価値観へのアクセス格差と直結しているのです。
2.本を手に取れない理由
本を手に取るのが難しい理由は地域や家庭の状況によってさまざまです。
•経済的な理由
まず家庭に本を買う経済的な余裕がない場合が挙げられます。たとえば、学校に図書室があっても、教科書以外の本はほとんど揃っておらず、子どもたちは図書室の限られた本を順番に回し読みするしかありません。休日に本屋に行くこともできず、読む楽しみを経験する機会が少ないのです。
•言語や教育システムの違い
母語で読める本が少ない地域もあります。アジアやアフリカの一部の地域では、子どもが学ぶ母語の絵本や物語本がほとんどなく、学校で学ぶ内容も限られているため、読むことで広がる世界が狭くなってしまいます。
•情報や文化へのアクセス格差
都市部では図書館や書店があり、インターネットで電子書籍にもアクセスできますが、地方や離島では図書館が存在しなかったり、交通手段が限られて本を手に入れるのが一苦労です。限られた本しか触れられない状況では、子どもたちが物語や知識に出会う機会が大きく制限されてしまいます。
こうした要因が重なり、世界中で多くの子どもたちが本を通して学ぶ機会や想像力を育む時間を十分に持てていないのが現状です。
3.本がもたらす力
ここで、本を読むことでもたらされるメリットについて考えてみましょう。
読書はただ文字を目で追う作業ではありません。物語や情報に触れることで、子どもたちにさまざまな力が育まれます。
•想像力や共感力が育つ
物語の登場人物の気持ちや行動を考えることで、他人の立場を理解する力が少しずつ身につきます。困難に直面する登場人物を追体験することで、問題解決のヒントや勇気を学ぶこともできます。
•知識や学習力が向上する
語彙力や文章理解力が高まり、学習の基礎力を伸ばす助けになります。さらに、知らなかった世界や文化に触れることで、好奇心や学ぶ意欲も広がります。
•感情や自己理解の助けになる
物語を追体験することで、自分の感情や考えを整理する力も育ちます。本を読む時間は、楽しみながら心の成長を促す大切なひとときなのです。
このように、本に触れることで得られる力は学習面だけでなく、心の成長にも直結します。だからこそ、本にアクセスできない環境にいる子どもたちの世界が制限されてしまうことは、とてももったいないことなのです。
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4.子どもに本を届ける団体
読書を通して子どもたちにさまざまな経験や学びの機会を届けるため、本や絵本を提供している団体があります。ここでは、その中から二つの団体を紹介します。
①シャンティ国際ボランティア会
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)は、1981年の設立以来、アジアを中心とした地域で教育・文化支援や緊急人道支援を行っている日本のNGOです。その活動の一環として、1999年から「絵本を届ける運動」を展開し、アジアの子どもたちに日本の絵本を届ける取り組みを行っています。
《活動の概要》
日本の絵本に現地の言葉を翻訳したシールを貼り、アジアの子どもたちに届ける活動を行っています。参加者は、自宅で絵本にシールを貼る作業を行い、その後、完成した絵本が現地の子どもたちに届けられます。これにより、言葉の壁を越えて、子どもたちに読み聞かせの楽しさや物語の世界を伝えることができます。
《対象地域と活動内容》
SVAは、カンボジア、ラオス、ネパール、ミャンマー、アフガニスタンなど、アジア7カ国8地域で活動を展開しています。現地の学校や図書館、コミュニティセンターに絵本を届けるとともに、図書館の運営支援や絵本の出版・配布も行っています。これらの活動を通じて、子どもたちの教育環境の向上や識字率の向上を目指しています。
《参加方法と支援の仕組み》
「絵本を届ける運動」への参加は、SVAの公式ウェブサイトから申し込むことができます。参加者は、絵本と翻訳シールのセットを受け取り、自宅で本に翻訳シールを貼る作業を行います。完成した絵本は、SVAを通じて現地の子どもたちに届けられます。また、SVAではボランティア活動や寄付を通じて、さまざまな支援の形を提供しています。
SVAの活動は単なる物資の提供にとどまらず、子どもたちに夢や希望を与える大切な活動です。日本からでも手軽に参加できるこの運動を通じて、世界中の子どもたちに読書の楽しさを届ける一助となることができます。
参考サイト→https://sva.or.jp/
②ブックサンタ
ブックサンタは、2017年にスタートした、困難な状況にある子どもたちに本を届けるチャリティープロジェクトです。この活動は認定NPO法人チャリティーサンタが主催しており、全国のNPOと書店が協力して行っています。
《活動の概要》
ブックサンタでは、参加者が書店で0歳から18歳の子どもたちに贈りたい本を選び、書店でブックサンタに参加する旨を伝えて購入します。その本は書店で預かり、クリスマスや誕生日などの特別な日に、NPO法人チャリティーサンタのボランティアサンタクロースや全国の子ども支援団体を通じて、子どもたちに届けられます。
《対象と届け先》
対象となる子どもたちは、経済的な困難、病気、災害など、さまざまな事情で厳しい状況にある全国の子どもたちです。届け先は、児童養護施設、小児病棟、母子支援施設、被災地の子どもたちなど、多岐にわたります。これまでに約40万冊の本が届けられ、2024年には約130,843冊の寄付が集まりました。
《参加方法と支援の仕組み》
参加方法は前述したように非常にシンプルで、誰でも気軽に参加できます。また、書店に行けない方のために、オンライン書店やクラウドファンディングでの支援も可能です。さらに、活動運営費の寄付や継続サポーターとしての支援も受け付けており、さまざまな形での協力が求められています。
誰でも「サンタ」になれるこの活動は、SNSやメディアでの紹介を通じて広がり、社会的な関心を集めています。より多くの子どもたちが本を手に取り、読書の楽しさに触れる機会が増えていくでしょう。
参考サイト→https://booksanta.charity-santa.com/
5.まとめ
読書は、子どもたちに想像力や好奇心を育む大切な経験を与えてくれます。しかし、世界や日本国内のさまざまな事情で、本に触れる機会が限られている子どもたちも少なくありません。
今回紹介した「シャンティ国際ボランティア会」や「ブックサンタ」の活動は、そんな子どもたちに本を届け、読書の楽しさを伝える大きな一歩となります。どちらの活動も、私たち一人ひとりが参加できるのが魅力です。
こうした活動を通じて、より多くの子どもたちが本を手に取り、物語や知識の世界に触れることができるでしょう。あなたも少しの時間や寄付で、遠くの子どもたちに笑顔と学びの機会を届けることができます。読書の楽しさを広げる小さな一歩に、ぜひ参加してみてください。
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