「烈火のように、人の心に炎を灯す」働くを支える、あたたかな伴走の形【私の軌跡】

行動することは、怖くない。
そう言い切れる人が、どれほどいるだろう。
でも株式会社Rekkaの原拓朗さんは、それを静かに、まっすぐに伝えてくれた。 何度も傷ついて、何度も迷って、それでももう一度、火を灯そうとした人の話だ。
誰かの背中をそっと支える手。名前のない仕事。失敗から立ち上がる勇気。
この記事では、原さんから受け取った「見えにくいけれど、大切なもの」を丁寧にすくい上げていきたい。
目次
プロフィール
原拓朗
株式会社Rekka代表。先天性の心臓病を抱えながらも、キャリアを積み重ね、オンラインアシスタント事業で法人120社以上を支援。主婦や副業人材の可能性を活かす仕組みづくりと、教育・育成を軸にした事業も展開して、社会と人に寄り添う。
参考URL:https://rekka-edu.co.jp/
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企業の背中を押す仕事と人の可能性――Rekkaが描く未来
株式会社Rekkaは、オンラインで企業の業務を支える「オンラインアシスタント」サービスを提供している。主なクライアントは、小規模な事業者や、少人数で運営する企業の経営者たち。
「事務、経理、人事、総務、SNS運用、ITまわりまで、サポートの内容は多岐にわたります。」と代表の原拓朗さんは語る。
仕組みはシンプルだ。約1,300名の登録したスタッフがリモートで企業のバックオフィス業務を代行し、経営者たちは本業に集中できる。コストを抑えつつ、現場にとっては心強い存在になる。最近『オンライン秘書』という言葉がまさに当てはまるかもしれない。
一方、働くスタッフ側にとってもメリットは大きい。多くは主婦や地方在住者、子育て中の方たち。時間や場所にとらわれず、社会と繋がれる選択肢が増えていく。
「特に今は、税理士業界に特化した支援も進めています。ただ作業を請け負うのではなく、経営者が本当に集中すべきことに注力できるように、環境を整えるのが私たちの役割です。」
こうして、オンラインアシスタントの仕事は、『目立たないけれど確かに必要とされている』場所に届けられていくのだろう。
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Rekkaにはもうひとつの軸がある。それが、オンラインアシスタントに紐づく教育事業だ。
プログラミング、Webデザイン、ライティング、動画編集、オンライン秘書など――。
学びを通して、スキルと自信を届ける場。原さん自身、起業前に経営スクールで役員を務めていた。しかし当時、思ったことがあるという。
「一方通行の授業では、伝わる人とそうでない人の差が大きくて。だから、個別に寄り添っていくそうした経験をもとに、個人向けの教育を行いたいと考え、株式会社Rekkaを立ち上げました。そこで当時見ていたチームメンバーに、個別でサポートを行ってみたんです。
すると、売上を大きく伸ばす人や、会社をやめて法人化に至る人も出てきました。成長していく姿を見たんです。」
対話しながら、自信を育てる。そうした経験をもとに、個人向けの教育を行いたいと考え、株式会社Rekkaを立ち上げたのだという。
設立当時は、自身の経験を活かしたWeb制作と、教育支援という2軸で事業を展開していた。やがて、Webとは異なる領域でも、経営者たちからの相談が増えていった。
一方で、支援していた人たちも第一線で活躍しはじめる。「この人の強みを、あの会社に繋げたらきっと役に立つ」そんな発想が、今のマッチング型の事業へと形を変えていった。
現在オンライン秘書サービスでは、累計約120社・150名以上の法人サポートを手がけるまでに成長している。
一度目の失敗と心臓病、それでもまた火を灯した
今でこそ軌道に乗っているRekkaだが、ここまでの道のりは平坦ではなかったという。
原さんにとってこれは、2回目の挑戦である。大学時代、企業のインターンシップを通して、経営の世界に触れる機会があったそうだ。
「その時、自分も経営者になりたい、と思ったんです。『この想いを一度燃焼させたい』という気持ちから、新卒から1-2年後に個人事業として独立したのが1回目の挑戦です。しかし、経験も、スキルも、仕組みも足りなくて、うまくいきませんでした。そのため、いったん会社員に戻り、地に足をつけて働きながら、もう一度だけ挑戦してみようと思いました」
そう決意させたのは、自身の「命」と向き合ったある出来事だった。
原さんは、先天性の心臓病を抱えて生まれてきた。 500人に1人の割合で起こる疾患。心臓に穴が空いたまま、自然に塞がらず成長してきたと語る。
「突然、心臓がドクンと跳ねるような感覚がくる。幼少期からずっと、大なり小なりありました。倒れはしないけど、これ、やばいかもしれないって直感で分かる感覚があるんです。」
それでも原さんは、3歳から18歳まで大好きいなサッカーを続けた。
そうした症状は長年の中で断続的に続いていたが、独立を考え始めていた頃に再び強く現れた。
「そのとき、これはまずいかもしれないと本気で思いました。あれが、自分にとって一番深く、生きることや死ぬことと向き合った瞬間だった気がします。」
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Photo AC より引用
もうひとつ、原さんの価値観に大きく影響を与えたのが、学生時代に訪れた「特攻記念館」だった。そこには、命を懸けて飛び立っていった若者たちの遺書や写真が残されていた。
「特攻隊の若者が、片道分の燃料しか積まずに飛んでいく。そこに遺された、彼らの手紙を読んだとき、の場所で見た若者たちの覚悟や想いが、ものすごく胸に刺さったんです。「日本を良くしたい」という思いが、そこで一気に強くなりました。」
先天性の心臓病と、特攻隊の手紙から感じた「生死への覚悟」——。
「それらの経験は、自分の人生観や死生観に大きく影響していて、『いつ死ぬかわからないなら、自分が生きた証を残したい』『周りの人の生活が少しでも豊かになるような活動をしたい』という想いが、2回目の独立を決意するきっかけになりました。」
社名に込めた、静かな決意
会社名の「Rekka(れっか)」には、ある漫画からのインスピレーションが込められている。
「『烈火の炎』という昔の作品があって、そこから名前を取りました。燃えさかる烈火のように、関わる人の心に火を灯したいという思いがあったんです。」
熱く燃えるような情熱かもしれないし、誰かの中に、ぽっとともる小さな灯りかもしれない。人生のどこかでその火が、人をあたためたり、照らしたりするように——。Rekkaという名前には、そんな静かな決意が込められているのだと思う。
「”人生”そのものが会社としてのテーマです。それは会社の理念にも込められていますし、Rekkaを通して幸せな人が増えたらいいなと思います。」
「行動することは怖くない」若い人たちへ伝えたい、たった一つのこと
インタビューの最後、原さんに若い人たちへのメッセージをお願いした。しばらく考えて、原さんはこう答えた。
「行動することは、怖くないということを伝えたいです。まだまだ評価社会が続いている中で、周りからどういう風に見られるかは気になると思う。そこをどう乗り越えることが、怖さでもあり肝でもあると思います。人は意外と気にしていませんから、私からは『踏み出すことは怖くない』そう言ってあげたいです。」
誰かを支える仕事。表には出なくても、確かにそこにある仕事。
そんな姿が、静かに世の中をあたためている。Rekkaは、そういった存在に意味を与える会社だと強く感じる。それは「効率」や「利益」では測れない、もうひとつの価値のあり方を考えることに繋がる。
誰かの挑戦の背中に、今日もそっと手を添えている人がいるということを、覚えておきたい。
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#社長インタビュー
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