ボランティアの現場で見つけた“多様性のチカラ”

こんにちは!JAVOメディアライターの穂積です。今回はボランティアの現場における多様性について考えてみたいと思います。
目次
1.はじめに ― 多様性は本当に実現されているのか?
「多様性を大切にしましょう」。そう語られる場面は、今や日常にあふれています。テレビのCM、大学の講義、企業の採用ページ──さまざまな場所でSDGsの価値観が語られ、とくに「多様性(ダイバーシティ)」は時代のキーワードとなっています。
しかし、それは本当に私たちの日常に根づいていると言えるのでしょうか。ジェンダーや国籍、年齢や障がいの有無といった“違い”を認識することと、それらを前提に共に行動することのあいだには、大きな差があります。
その差を埋める現場のひとつが、ボランティア活動です。多様性とは単に「理解する」だけでなく、「ともに何かをする」中でこそ実感できるものです。実際、対話よりも“協働”を通じてこそ、相互理解は深まりやすいという指摘もあります。ボランティアは、そのような実践の場として、今改めて注目されつつあります。
今回は、ボランティア活動が持つ「多様性の受け皿」としての側面に注目し、その実態を数字とともに読み解いていきます。
2.支援される人たちにこそ、多様性があります
ボランティアという言葉から思い浮かぶのは、イベントの運営補助や災害時の支援、高齢者施設での活動などかもしれません。そうした多くの現場において、「支援される側」にいる人たちは、実に多様な背景を持っています。
たとえば、日本に住む外国人の数は2020年の国勢調査によると約280万人で、これは総人口の約2.2%にあたります。このうち、日本語による日常会話が難しい人たちは、行政手続きや医療機関の利用において大きな困難を抱えているといわれています。さらに、在留資格によっては就労や教育の機会が制限されていることもあり、社会的孤立のリスクが高まっています。
また、高齢化が進む日本では、2024年時点で高齢化率が29.1%に達しています。特に地方部では独居高齢者の割合が高く、買い物や通院にさえ不自由する方々も少なくありません。こうした方々は、日常の中で他者と接点を持たないまま生活しているケースもあります。
さらに、障がいのある方々や生活困窮者、引きこもり状態にある若者なども、ボランティアの支援対象となることがあります。彼らの置かれている状況は多様であり、一括りに「支援される側」として語ることはできません。ニーズも支援の方法も、一人ひとり異なるのです。
こうした違いを理解し、受け止める姿勢こそが、ボランティア活動に求められています。それは決して特別な技術ではなく、「相手の立場に立って考える」力、そして「聴く力」に支えられているのです。
3.支援する側にも、多様性が広がっています
見落とされがちですが、ボランティアに参加する「支援する側」にも、実は多様性があります。学生や社会人、リタイア後のシニア世代など、年齢や職業、価値観が異なる人たちが、ひとつの目的のもとに集まっています。
文部科学省の調査によると、大学生のおよそ3割が在学中に何らかのボランティア活動に参加しています。動機は「社会貢献をしたい」や「就職活動に活かしたい」などさまざまですが、中には「誰かとつながりたい」「自分の役割を見つけたい」といった気持ちで参加する人も少なくありません。
最近では、企業の社会貢献活動(CSR)や副業解禁の流れもあり、平日に会社を通じてボランティアに参加する社会人も増えています。社内で得たスキルや経験を地域社会で還元したいという思いが、参加の後押しになっているようです。
また、退職後のシニア世代が「第二の人生」としてボランティアに関わるケースや、子育てが落ち着いた主婦の方が地域の子ども食堂を支えるといった事例もあります。こうした多様な参加者の存在は、「誰でも社会に貢献できる」という可能性を私たちに示してくれます。
近年では、外国人やLGBTQ+の人々など、これまで支援を受ける側と見なされてきた層が、支援者として参加するケースも増えてきました。多様性は「受け入れるもの」ではなく、「共に担っていくもの」へと進化しつつあるのです。
4.多様性は、現場でこそ実感できます
SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」は、制度や政策だけでなく、私たち一人ひとりの行動によっても実現されていくべき課題です。しかし現実には、「多様性」は企業のPRや学校のレポート課題など、表層的に語られることも少なくありません。
その点、ボランティア活動の現場は“違い”と“協働”を肌で感じることのできる貴重な場です。言葉が通じなくても、身振り手振りや笑顔で気持ちが伝わることがあります。車いす利用者とともに活動すれば、道の段差ひとつにも敏感になります。日常生活では気づけない「誰かの不便さ」に、自分自身の行動を通じて気づかされるのです。
また、地域行事や清掃活動のような一見単純な作業でも、世代や文化を超えた交流が生まれます。多様性は特別なテーマではなく、実は私たちのすぐそばにある「生活の現場」にこそ存在しているのです。
こうした経験から得られる実感は、教科書やSNSの投稿だけでは得られません。「わかっているつもり」ではなく、「共にいる」ことでこそ、多様性の意味が見えてくるのです。
5.おわりに ― ボランティアは、“多様性の教室”です
多様性について語ることは簡単ですが、それを行動として実践するのは簡単ではありません。だからこそ、地域のボランティア現場にこそ、いま注目すべきではないでしょうか。
ボランティアの現場では、自分とは違う背景を持った人たちと出会い、共に過ごします。言葉や文化、年齢や身体の状態、考え方など、その“違い”はときに戸惑いを生みますが、それを乗り越えて一緒に活動することで、信頼や理解が生まれます。
特別なスキルや肩書きがなくても、誰かと関わることで社会の一員として貢献することができます。ボランティアは、そのための入口であり、実験場であり、学びの場なのです。
JAVOでは、そうした経験を証明書という形で後押ししています。この証明書は、単に実績を示すものではなく、「行動した記録」として自信と信頼を後押しするものです。今後、ボランティア活動の価値がさらに認められていく中で、自らの経験を言葉にし、伝えていくことも重要です。
しかし何より大切なのは、その一歩を踏み出すことです。違う誰かと出会い、行動を共にすること──それが、あなた自身の“多様性の理解”を深めてくれるはずです。
ボランティア証明書の発行はコチラ【ボランティア証明書発行(全NPO対応) | NPO法人JAPANボランティア協会 (javo.or.jp)】
参照:
1. 総務省『国勢調査2020』
外国人の居住者数:約280万人(総人口の2.2%)
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/
2. 内閣府『高齢社会白書 令和6年版(2024年)』
高齢化率29.1%(2023年10月時点)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/
3. 文部科学省『大学生のボランティア活動実態調査(過去調査)』
大学生のおよそ3割が何らかのボランティアに参加経験あり
主な動機:社会貢献、就職活動、つながりの欲求など
https://www.mext.go.jp/(詳細ページが変動するためトップ)
4. SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」
持続可能な開発目標における「共生社会」の考え方
日本政府公式ページ:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/
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