日本が抱える里山保全の問題点 、そして私たちができること

こんにちは!JAVOメディアライターの村見です。
今回も前回に引き続き私自身の体験談を交えて書かせていただこうと思います。
目次
1 日本の里山保全上の問題
日本の里山は、農林業や狩猟などの人間活動によって維持されてきた半自然の生態系ですが、近年その存続が危機に瀕しています。これまで人間と自然が相互に関わることで形成されてきた生態系が、人口減少や経済の変化、行政の対応の限界によって崩れつつあり、対策が急務となっています。
(1)担い手不足と高齢化による管理の困難
かつて里山は農業や林業、狩猟を中心に人々の生活の一部として活用されてきました。しかし、日本全体の人口減少や若年層の都市部への流出により、地域社会の担い手が急激に減少しています。この影響で、日常的に行われていた下刈りや間伐などの管理が滞り、耕作放棄地や放置林が広がっています。
狩猟者や林業従事者の高齢化も大きな問題です。狩猟はシカやイノシシなどの個体数管理に欠かせない活動ですが、近年は狩猟免許を持つ人の高齢化が進み、新たな担い手が不足しています。その結果、獣害が拡大し、農作物被害が深刻化するだけでなく、生態系全体にも影響を及ぼしています。下層植生が食べ尽くされることで林床が裸地化し、土壌浸食や生物多様性の喪失が進むという負の連鎖が生じています。
(2)野生鳥獣による生態系の変化
人間の活動が減ることで、里山の生態系バランスが崩れ、野生鳥獣の影響がより顕著になっています。特にシカやイノシシが増加したことで、森林の下層植生が食べ尽くされる傾向にあり、これが土壌浸食や水質悪化を引き起こしています。かつて里山が「緩衝帯」として機能していた時代には、人間の活動によって鳥獣の生息域と人間の生活圏の境界が明確でした。しかし、管理が行き届かなくなった結果、動物の活動域が広がり、人里への侵入が頻発するようになっています。これにより農作物被害が増加し、地域経済への影響も無視できません。
(3)土地所有権の分散と管理主体の不在
里山の管理を困難にしている要因の一つが土地所有権の分散です。特に私有林では、所有者の高齢化や世代交代が進むにつれ、境界が曖昧になったり、不在地主が増えたりして、適切な管理が行われなくなるケースが増えています。地域全体で広域的な管理を行うためには所有者間の合意形成が不可欠ですが、これが困難なため、十分な保全計画が立てられない状態になっています。
森林経営管理法の導入によって自治体が経営権を集積できる仕組みが整備されましたが、現場では地権者の探索や合意形成の負担が大きく、実際に活用できている事例は限られています。このため、土地の管理を適切に行うための新たな施策が求められています。
(4)里山の経済的価値と市場の限界
日本の里山は市場経済の中では適切に評価されにくい構造にあります。国産材の価格は長期的に低迷しており、炭焼きや薪炭林利用などの伝統的な活動では十分な収益を確保することが難しくなっています。市場では洪水緩和や水源涵養、景観価値といった生態系サービスが貨幣化されておらず、里山の保全にかかるコストは主に地元が負担する形になってしまっています。
また、里山資源の持続的な活用のためには、地域内で循環型の経済を確立する必要があります。近年では里山の観光活用や地域ブランドの確立が試みられていますが、こうした取り組みが十分に広がっていないのが現状です。
(5)行政の分断と統合的な施策の欠如
日本の里山に関する政府施策は、農林水産省・環境省・国土交通省など複数の省庁に分かれており、それぞれが個別の対応を進めているため、統合的な政策が確立されていません。たとえば、農地施策と鳥獣対策、森林環境譲与税と観光振興補助などが独立して進められ、地域全体のマネジメントが十分に考慮されていないのが現状です。
里山生態系に関する法制度は、努力義務の範囲にとどまっているため、実効性のある保全計画の策定や財源確保が困難です。国や自治体が里山の公益的機能を正しく評価し、それに見合う支援制度を確立することが求められています。
(6)気候変動による極端気象と災害リスク
近年、気候変動の影響によって豪雨や猛暑などの極端気象が頻発しています。荒廃した里山では風倒木や虫害のリスクが高まり、十分な管理がなされない林地では災害時に深刻な影響を受ける可能性が高まります。特に豪雨の際には、放置林から流木が発生し、下流域で洪水被害を引き起こすケースが報告されています。こうした問題に対応するためには、環境保全のみならず、防災の観点からも里山の管理を強化する必要があります。
2 体験談
先日、私は自分が通っている大学の企画を通して「NPO法人トチギ環境未来基地」さんの協力のもと、里山保全活動に関するボランティアに参加しました。この経験を通じて、実際の保全作業を体験するとともに、座学を通じて環境保全活動の意義について深く学ぶことができました。
ボランティア活動の中心となったのは、棚田や森林の管理作業です。具体的には、棚田に生えてしまった木々を伐採したり、生物多様性が損なわれ、竹が無造作に繁茂している場所の竹を間引く作業を行いました。これらの作業を通じて、放置された里山がどのような環境問題を引き起こすかを実感することができました。例えば、竹が過密に成長すると、他の植物の生育を妨げ、結果として土壌の栄養状態が悪化することがあります。また、適切な管理が行われないと、景観の維持が難しくなるだけでなく、地域の生態系にも悪影響を及ぼす可能性があることを目の当たりにしました。
さらに、座学のセッションではNPOの活動について学びました。企業とは異なり、NPOは即効性のある収益を求めるのではなく、長期的な視点で人の輪を広げながら活動を継続していく特徴があります。そのため、時間はかかるものの、確実に地域とのつながりを深めながら、持続可能な活動が可能となることがわかりました。特に印象的だったのは、NPOには活動の期限がないため、状況に応じた柔軟な対応ができるという点です。従来の固定観念では、環境保全活動は短期的なプロジェクトとして考えがちですが、継続的に地域の課題に寄り添いながら行うことが重要であることを学びました。
3 NPO法人トチギ環境未来基地
ここで、お世話になったトチギ環境未来基地さんについて少し紹介させていただこうと思います。
トチギ環境未来基地は栃木県益子町に事務所を置く若者主体の環境保全の団体です。市民による環境保全活動の推進を目的として設立され、団体名は「若者が、自然環境の保全、地域の活性化、生活の再生などの活動を行い、 それに関わる若者が、次の社会を担う力をつける、そのための拠点(基地)になる」という想いから名付けたそうです。
主に森林の整備、里山保全に関する活動を行っています。その活動の参加方法としては、日帰りボランティア、寄付など他にもさまざまな参加方法があるそうです。
詳しくはホームページ、並びに公式インスタグラムをご確認下さい。
https://www.instagram.com/tochigicc/
4 終わりに
この記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。こ日本の里山保全に関する問題点などを実感することができたでしょうか。その現状を一人ひとりが知るだけでもより良い方向に進んでいくと思います。また、この記事を読んでくださった皆さんがボランティアに参加するなど何か行動を起こすきっかけになれば幸いです。
ボランティア証明書の発行はコチラ【ボランティア証明書発行(全NPO対応) | NPO法人JAPANボランティア協会 (javo.or.jp)】
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