特定非営利活動法人こまちぷらすの理事長森祐美子さんへのインタビュー
こんにちは! JAVOで学生ボランティアとして活動している浦野です。
今回は、特定非営利活動法人こまちぷらすの理事長森祐美子さんに、お話を伺いました。「子育てをまちでプラスに」を合言葉に、子育てが「まちの力」で豊かになる社会を目指し、活動されています。
では、インタビュー内容をご覧ください!
1.こまちぷらすとは
こまちぷらすという団体は「子育てをまちでプラスに」を合言葉に、街のみんなで子どもを育てることが当たり前の社会を目指して活動しています。そのために、孤立した子育てをなくしたり、色々な人の力が活きる機会を大切にしたりしています。
神奈川県横浜市戸塚区にある2か所の拠点を中心に、スタッフが約46人、ボランティアが約340人と、たくさんの方々の参加によって活動できていることが大きな特徴です。ボランティアの方は中学生から80代までおり、子どもをおんぶしたり一緒に来たりして子育て中の方も参加しています。シニアの男性の方も増えています。
インターンやボランティアで来る、子どもたちより少し年上の学生たちは、子どもたちに大人気です。学生たちは最初、赤ちゃんを抱っこすると肩に力が入っているのですが、だんだんと慣れていきます。兄弟やいとこの減少から、赤ちゃんを抱っこする機会も少なくなっています。だからこそ、「もし自分が子どもに恵まれたらこんな感じかな」と学生たちも、赤ちゃんのお母さんたちも喜んでいます。
2.活動内容
主な事業は、飲食ができるカフェ型の居場所「こまちカフェ」と「こよりどうカフェ」の運営です。平日は毎日見守りボランティアの方がいて、両手を使って温かいうちにご飯を食べることができます。カフェの中には遊び場もあり、こまちカフェの遊び場の設計は小学生がしてくれました。大人立ち入り禁止のコーナーがある子どもたちのアイデアが詰まったスペースで、遊ぶ子たちも夢中になってくれています。
誰でも無料で食べ物を出し入れできる「コミュニティ冷蔵庫」も設置しています。お客さんがカードを買うことで、次の方が無料で飲み物を飲めて、半額はこまちぷらすに寄付が入る「恩送りカード」という仕組みもあります。こうした取り組みによって、利用者負担ゼロでもカフェを使うことができるようにしています。
お寺の中にある「こよりどうカフェ」では保育園にお惣菜を届けて、仕事帰りの親御さんが子どもとお惣菜をピックアップして帰れるように連携をしています。この事業は内閣官房のモデル事業に選ばれました。
カフェのお客さんは地元の方を中心に、常連の方、初めていらっしゃる方様々です。遠方から来るお客さんもいらっしゃいますし、別の県に住む方々が待ち合わせをしていることもあります。全国から視察に来る方もいます。
子育て情報を見られるスペースの運営や、街のみんなで出産祝いを作って届ける「ウェルカムベビープロジェクト」も行っています。「ウェルカムベビープロジェクト」はヤマト運輸さんと立ち上げたもので、小学生から90代の方まで出産祝い作りに関わっています。戸塚区だけでも、年間900人くらいの方がメッセージを書くなど参加してくれています。他にも、商店会の事務局を担ったり、ダブルケア・不登校や引きこもり・障害をテーマにした話せる場を提供したりしています。
海外との連携も行っており、トルコやイスラエル、フィンランド、デンマーク、ヨルダンなどの世界各国の市民の方とオンラインでつながって、お菓子の開発をしました。見せてもらった現地で食べているお菓子からヒントを得て、こまちぷらすにあるお菓子工房でその国のお菓子を作り販売しました。また、その国の人とオンラインでつながりながら、一緒にお菓子を食べるという企画も行いました。
海外でもコミュニティの崩壊が起こっており、「そうした場所を良い形で再生するにはどうしたらいいか」に対するヒントを日本から得ようとしている国もたくさんあります。そうした場所でこまちぷらすの実践を伝えたり、逆に学んだりすることもしています。最近もアメリカへ行ってきました。
3.始めたきっかけ
一つは、公共文化施設の評価に関する研究を行っていた大学時代に、フィールドワークで通った新潟県の街が好きになったことです。都内から60人くらいの若者を連れて1泊し、地元の方々と一緒に料理を作って一日カフェを開くというイベントを行いました。この経験から、何か事業をするときに「カフェ」という装置がたくさんの方の参加の土台になるという実感を得ました。
大学3年生の時にはその地域の中期計画策定委員に選んでいただきました。色々な立場の方とまちづくりに関する議論をしたり形にしたりすることに楽しさを感じ、「自分はこういうことが好きなんだな」と気づきました。こうした機会に恵まれたことは、ラッキーだったと感じています。
もう一つのきっかけは、自分自身の出産です。言葉にならない孤独感・孤立感を感じた時に、子育て支援拠点の立ち上げに参加したことですごく救われました。だからこそ、参加できる場を当たり前のように街の中に作っていきたいと考えました。
また前職でギリシャやスペインなどを調べる中、ものづくり産業の衰退による失業率の高まりや、政府の財政基盤の揺らぎを目にしました。その時に、もし自分が事業を行うならば公財源に依存するのではなく、民間でも続けていけるモデルにしたいと思いました。これが、現在のこまちぷらすのモデルにつながっています。
事業を始めようと決意したのは、2011年の東日本大震災がきっかけでした。会社から帰れなくなった時に、「明日」は突然なくなるかもしれないから今やろうと思いました。活動を始める際に戸塚区に住んでいたことから、拠点は戸塚区にしました。
4.やりがい
たくさんありますが、毎日奇跡的な瞬間に出会えることです。日々、出会ったことがないような方に出会えますし、目にしたことがないような出来事にも遭遇します。大変なこともありますが、それ以上に自分の視野が広がります。大変な出来事に遭遇しても、どうすればいいか考えてくれるスタッフがたくさんいます。そうしたスタッフがいる限り、何とかなるという安心感もあります。
一番嬉しい瞬間は、赤ちゃんを抱っこしている方が落ちついた表情や今日来てよかったという表情で、カフェに座っている様子を見られることです。「この場を作れてよかったな」と思います。商店や街の方々と共同で作っている過程も楽しいです。毎日が文化祭のように感じます。
印象的なことの一つとして、カフェの移転を考えていた時の出来事があります。結果的には移転せず、2店舗目となる「こよりどうカフェ」を作ることになりました。移転しないことが決まった時、ずっと通ってくれていた小学校低学年の子がすごく喜んでくれました。その子がお手紙を書いてくれたのですが、一生懸命で丁寧な字で「こまちさんは今のままでいいよ」と書いてくれていましたし、大きなプロジェクトの時に使ってくださいと10円玉も貼り付けてくれました。
なんて可愛いのだろうと思うと同時に、新型コロナウィルス感染症の世界的流行のあった辛い時期も経て長く続ける中で、こうした子どもたちや保護者と出会えたことに喜びを感じました。また、子どもたちにもこの場がとても大事だと思ってもらえて、家族とは違う大人として特別なつながりを感じてもらえる関係になれたことが、すごく嬉しかったです。長く続けて良かったですし、これからも頑張ろうと思いました。もらった手紙は、今もカフェに飾っています。
5.今後の展望
2020年頃にスタッフ全員で作った2030年のビジョンを実現していくことです。
このビジョンは、一人一人の「こんなことができたらいいな」を描き、アトリエあちゃらった様にイラストで表現していただきました。
今と同じようにカフェがあったり、DIYのように色々な人の関わりしろがあったり、街の人が先生となる「こまちスクール」や住民たちと助け合える住まいなども含まれています。2030年には、オンラインでも実際に人が目の前にいるように一緒にいられると考えています。そういった形で海外ともつながって、意見や視点の交換ができると思います。
ビジョンにあるような街のみんなで子育てをしている状態が、日本や世界各地に広がっている状況を作っていきたいです。そんな思いを込めてビジョンの後ろには、レンコンが描かれています。一つの街でできたことが、他の街でもできるとは限りません。だからこそ、レンコンが切る断面によって穴の位置が違うように、色々な街で街ごとの魅力や人の強みを活かして、場づくりやみんなで子育てする文化を各地で作りたいです。
6.伝えたいこと
私達は課題を解決しようというアプローチより、楽しい・面白い・可愛い・素敵という入り口の方がたくさんの人が参加してくれると思っています。ですので、カフェという支援の雰囲気はない場所を作っています。
最近は「社会の課題を解決しなきゃ」と、一生懸命考えている学生も多いと思います。それはすごく大事なことですが、その枠の中だけで考えていると課題に関心がある人しか関わらなくなってしまいます。課題解決にも着目しつつ、どうしたら楽しく色々な人が関わりたくなる仕掛けを作れるかという発想も持てるといいと思います。そうした発想をかけ合わせながら、様々な団体でボランティアしたり学んだり、実際に自分で作ってみたりできるのではないでしょうか。
学生のうちが一番試行錯誤できると思うので、いっぱい大人に相談して、たくさん提案して、色んな冒険をしてみるといいと思います。
ボランティアの募集はホームページから行っています。毎月の登録会に参加してもらうことで、ボランティアを始めていただけます。赤ちゃんの見守りやお菓子工房でのお菓子作りをしてみたい方は、ぜひこまちぷらすに来ていただけると嬉しいです。
7.おわりに
インタビューは以上となります。
森さん、インタビューへのご協力ありがとうございました!
一言に子育て支援といっても、様々な形や関わり方があるのだと知ることができました。今の時代にあった街のみんなでする子育ての形を、今後親になっていく私達若い世代も考えていけるといいですね! 赤ちゃんや子どもたちと楽しく関わりながら人助けをしたい方は、ぜひ活動に参加してみてください。
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