「吸着材で固定概念を変える」ABRACADABRA JAPAN 野牛泰治さんへのインタビュー
皆さんこんにちは!JAVOで高校生インタビュアーとして活動している能美です。
昨今テレビや街中で耳にすることが多くなった「SDGs」ですが、実際にどんな活動が行われているのか皆さんはご存知ですか?
今回インタビューさせて頂いたのは「ABRACADABRA JAPAN」社長の野牛さんです。
こちらの企業は環境に良いものづくりとその提供に注力していて、日々SDGs達成に向けて努力されています。
それでは早速、その事業内容やこだわりについてご紹介していこうと思います!
事業内容について
「ABRACADABRA JAPAN」さんでは主にナノファイバーを使った油の吸着材を開発・製造しています。
家庭で使われた油は環境破壊に繋がるため自然に放出することが出来ず、近年その処理方法には注目が集まっていました。特に少量の使用済の油をどうやって処理するか、これが難しい問題でした。
皆さんも家で揚げ物をする際などに困ったことがありませんか?
それを解決するのがこの油の吸着材!
吸着させた油を家庭から回収することで効率よく環境保護ができるんですね。
・何故ナノファイバーなの?
マイクロファイバーという物を聞いた事がある方は多いのではないでしょうか。
これはその名の通りマイクロサイズ(髪の毛より少し細いくらい)の繊維が集まったシートのこと。
ですがナノファイバーはその進化版、ナノサイズ(髪の毛の百分の一)の繊維が集まったものなんです。
元より油の吸着のために利用されてきたマイクロファイバーですが、ナノファイバーは比表面積の増加によってその3倍も吸着するんだそう。
より効率よく、省資源化にも貢献できる素晴らしい素材なんですね。正にナノ化の最先端!
・どうやってナノファイバーと出会ったの?
野牛さんは、五年ほど前に知人がきっかけでナノファイバーに出会いました。
その技術に感心して、あるメーカーのナノファイバー関連の販売代理店を始めたのだとか。
開発者や販売者の間では横の繋がりがあるようです。
起業や技術者仲間が欲しい方、この繋がりはどうやって作るの?と思われたことでしょう。
勿論お聞きしてきましたよ!
―インタビュアー:「知人のきっかけとありましたが、技術連携のコミュニティを作るにあたってコツなどはありますか?」
―野牛さん:「1から10まで全部自分で技術を作ろうと思ったら幾らお金があっても足りません。既に技術を持っている人達と協力して、それを繋ぎ合わせていって自分が目的とする全体的な技術を達成する。日本では15年ほど前にナノファイバー技術の商業化への試みが国の主導で始まりました。そこから、色々な人達が関連した技術を開発して実用化に取り組んでいます。そういう人達を見つけて、技術を教えてもらいながら繋ぎ合わせていくのです。
今では技術交流の場が色々なところに広がっています。とても便利な機会はビックサイトなどで行われている技術や商品の展示会です。展示会に行けば、関連しそうな技術や商品を作っているメーカーさんとか、一つや二つは必ず見つけ出せます。」
どんな経緯・想いで企業を立ち上げたのか
企業を立ち上げるにしても、創成期の商品には柔軟性が求められます。
より多くの人のニーズや用途に合わせて変化することが出来る商品とは何か、最初はとても悩んだようです。
そして考え抜いた野牛さんは、同じ考えを持つ企業と技術や販売面においてパートナーシップを結びました。
こうすることでより広いニーズに答えつつ、オリジナリティのある開発ができるんですね!
―インタビュアー:「柔軟な考えを持つにはどうすればいいでしょうか?」
―野牛さん:「柔軟性とは即ち、聞く耳を持つことです。
お客様のニーズに答えるにはまず話を聞いて相手の立場に立って観ること。答えられるかはその後の問題です。」
一番苦労したこと
企業にとっての一番の課題は認知度の向上です。
これは今も野牛さんにとっての大きな壁となっています。
「ABRACADABRA JAPAN」さんのようなベンチャー企業では、大企業のように広告を利用して一気に知名度を増やすことができません。
お客様に使っていただき、そこから少しずつ着実に口コミを広めていくのが、堅実で最も効果的な方法なんだそう。時間は掛かりますが、無理なく進めていくべきです。
参入障壁は価格や既存商品に対する消費者の固定観念だと仰っていました。だから、本当のことを判ってもらえるように、判り易い説明をしなくてはなりません。判り易い説明の一つは、身近のものに例えて言うこと、例えば、大さじ2杯分とか牛乳パック1.5本分とかいったことです。
―インタビュアー:「逆に、これまでの企業活動を通して何か嬉しかった出来事はありますか?」
―野牛さん:「やはりニーズに合わせた商品を開発してお客さんが喜んでくれたことですね。
過去に、工場などで使われる作業靴の底に付着した油が滑りやすくて危険だという話をいただきました。
それを解決しようにも、吸着剤単体では使えない。
そこでゴムマットを作って巧く組み合わせて動かないように改良してみたところ、これは使えるとても喜ばれました。あれは嬉しかったですね。」
・認知度を向上するために
ネット社会の現代で認知を広げるということは、ネットの中でいかにこの会社や商品の名前を広めるかにあります。
ですがそれも一つの企業の中で完結するには容易でない仕事です。
ホームページの作成をしても、それを見てもらうにはどうしたらいいかが分かりません。
今はそれを得意とする専門家集団に手伝ってもらいながら少しずつ頑張っているそうです。
SDGsについて
SDGsといっても色々な目的があり、一括りにして話すには難しいものです。
野牛さんがこれまでの人生で見てきた「環境と開発」についてお話を伺いました。
―野牛さん:「これまでの社会にあったのは、余りある資源を無駄にしてでもコストを最優先に開発する文化でした。でも今はそれが逆回転して、コストをかけて環境を守ろうとしている。
大切なのは、コストをかけてでも守らないといつか資源は枯渇するという事実と、問題意識です。皆で同じ危機感を共有しながら、一つの目標に歩んでいくのが理想です。」
・社会や環境に貢献出来ていると感じるのはどういう時か
省資源や環境保護の観点で自分には何ができるか、野牛さんは常に考えています。
現在の吸着材開発はその点でよく適していると感じているようです。
一人の小さな一歩も、積み重なれば大きな成果を産むんですね!
今後挑戦してみたいこと
「ABRACADABRA JAPAN」さんには既に幾つか今後の展望があります。
これまではナノファイバーを使用した油吸着剤の開発を第一に進んできましたが、断熱材や(ダウン)防寒ジャケットへ中綿素材への利用など代替案は沢山。
フィルターとして利用することで空気清浄にも使えますし、不純物を吸着する(水を吸わないという)特性を活かして、浄水効果のある商品も期待できるのだとか…!
この機能を広げて色々な形で社会に貢献したい、この技術を日本の中で高めていきたいと、野牛社長は語ります。
目下最大の目標は、「国内に自社の製造設備を持つこと」らしいです!
―インタビュアー:「ここまで企業を育ててきた野牛社長ですが、学生時代は何かされていましたか?」
―野牛さん:「私は正に大量消費の時代、環境に逆行した流れの中で産まれました。
効率化を重視した産業の発達を見て育ったんです。いつも工夫することを考えて、人と同じ事はしたくなかった。
どうやったら自分らしいやり方で問題を解決できるのか工夫して生きてきました。
起業家精神という意味で言うなら、この頃からあったのかもしれません(笑)」
幼い頃から工夫を考えることが身についていたんですね。
常に試行錯誤してでも新しいことに挑戦する姿勢が大事なのかもしれません。
ボランティアや環境活動をする人に向けて
ここまで野牛さんに沢山の想いをお聞きしましたが、このインタビューもついに終わりとなってしまいます。
JAVOの記事を読んでくれている皆様に向けてメッセージをいただきました!
―野牛さん「ボランティアは大切なことです。
ある目的に向かって、有償無償を問わずに活動できるのは素晴らしいことだと思います。
それも地道な活動が必要で、すぐに100パーセントの結果を得られることはまず無いでしょう。
ですがどうか焦らず、目的に向かって着実に前進しているという意識をもって頑張って欲しいです。
まずは一日の総括で成果を確認することから始めてみてはどうでしょうか。」
まとめ
インタビューは以上になります。
この記事を読んで、少しでもSDGsや環境活動に興味を持ってもらえたなら幸いです。
インタビューに協力してくださった野牛さん、並びに「ABRACADABRA JAPAN」さん、ありがとうございました!
JAVOではこの他に、あなたのボランティアエピソードや団体の活動など、様々な分野で沢山の記事を募集しています!
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